Chapter 23.6-王の御心-

ルーナの情熱的なスピーチに比べれば、ノクトのそれは、スピーチというより、ほんとにただ事務的な連絡であったような気がする。だというのに、あの短いスピーチだけですっかり疲れきって、今はぐったりと、展望室のソファーに横たわっていた。


しかし、ノクトだけではない。その横では、プロンプトも、船酔いでもしたような顔色でソファにうっつぷしており、タルコットも、げんなりしたようすで、壁際によりかかって頭をもたげていた。


辺りはようやく静かだ…アラネアを、ワグが一足先に、揚陸艇に連れて電波塔を出たおかげだ。


「みなさま、お疲れ様です」


ルーナは可笑しそうに笑いながら、ぐったりとしていた3人に、順に水のボトルを配っていく。プロンプトは辛うじて顔を上げてそれを受け取りながら


「録音ってないですかね?!…オレ、ルーナ様のスピーチ聞きたかったのに」


さあ、どうでしょうか…と、ルーナは困った顔をして首をかしげた。プロンプトたちがスピーチを聞き取れなかったと聞いて、ノクトは内心ほっとしていた。先ほどから、ちょっと上から目線だったかな、などと後悔ばかりが浮かんで仕方がない…言葉使いも、明らかに可笑しいと自分でもわかっている。


きっと、イグニスにどやされるな…


ルーナはノクトの心情を見透かしているように、水のボトルを受け渡しながら、微笑みかける。


「ノクティスも…お疲れ様です。力強いお言葉でしたね」


なんだか、母親にでも慰められている気分だ…ノクトは苦い顔をしながら、体を起こし、ぶっきらぼうに水をがぶ飲みした。


「おい、いつまでのびてるんだ…トルドー少将が呼んでるぞ」


放送室から出てきたハルマは、ノクトに呼びかけた。その後ろからトルドーも出てきて、


「ノクト、ちょっといいか」


というので、ノクトは、うんざりした顔を向けながら立ち上がった。


「わーったよ…」


てっきり放送室で3人で会談のつづきでもするのかと思ったら、トルドーが、手招きして非常口の方へ誘う。ハルマは、そのまま展望室に残ってルーナに話しかけていた。なんだ…二人か? ノクトは不思議そうにトルドーの背中を追う。


「なに…私も休憩させてもらう。ちょっと付き合ってくれるか。さっき、君のところのおちびさんが、外が気持ちがいいって教えてくれたんでな」


ふうん…ノクトは引っかかるものを感じながら、トルドーに続いて、非常口から外へ出た。そのまま、アンテナのメンテ用に続いている外階段を登る。先ほど、アラネアたちが演説を聞いていたという、最上部の踊り場まで行った。なるほど…高いところ好きのアラネアが夢中になるわけだ。ここからは、帝都からその先に続くニフルハイムが一挙に見渡せるようだ。延々と続く、やせた土地…廃墟となった眼下の街から、静かな風が吹き上げて、ノクトの前髪を揺らした。


「なるほど。おちびさんの言うとおり、いい場所だな」


トルドーは、いつもの疲れた様子でほうっと息をついている。ノクトも、しばし、その風景に目を奪われていた。見渡す限り破壊された世界…ここも、これから、復興していくのか。それは、不思議な感覚だった。ここにいると…まるで、あの凄惨な戦場が、遠い記憶のように感じる。


「ブラントンは…もう、埋葬したのか?」


ノクトは、静かに聞いた。トルドーは、ああ、と顔をしかめて


「いや…実は、彼には要塞の霊安室で待っててもらってる。狭くて悪いんだが…」


と、頭を掻いた。


「彼の婚約者の隣に埋葬してやりたいんだが、なかなか手がまわらなくてね。…ヴィクトルもな。彼の故郷は壊滅的だ…一族の墓に入れてやりたいが、そっちは難しいかもしれないな」


ノクトは、この冷静な男の、繊細な一面を感じながら、トルドーに対して持っているわだかまりの正体に気がつきはじめていた。彼への反抗…反発… それは自分の正攻法が、通用しないことの焦りなのかもしれない。ノクトは自分の未熟さを、噛み締めるように、大きなため息をついた。そして、


「ブラントンのこと…すまない…」


苦しそうに吐き出した。トルドーは、ノクトの俯いた横顔を見た。


「気にするな…と言っても無理だろうが…それが戦場だ。君のせいではない」


「…しかし」


と、ノクトは苦しそうに歯軋りをした。


「オレのせいで…もたもたしたんだ。聞いていないか? ワグに…」


ああ…と、トルドーは思い当たって、また、視線を遠くへ投げる。


「…聞いたよ。ターゲットを縛り上げたそうだな。あいつが止めを刺したんだろ…ワグも気にしていたよ。君の気持ちを汲んでやれなかったってな」


ノクトは首を振る。


「ワグに手を汚させただけだ…結局、余計な時間をかけて出遅れた。ブラントンはそれで焦って…」


トルドーは、ふうん…と唸った。


「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない…死んだ後となっては、ああしておけば助かったと誰しも思うもんだ。君も、これまでに散々経験があるだろう。」


トルドーはさほどの感情も見えないいつもの疲れた様子で、淡々と言う。


「我々にできることなんてわずかだ。悔いても命は戻らん…だから前を向くだけだ」


ノクトは、くっ…と苦しそうに声を漏らした。わかってるさ、そんなことは…

トルドーは、ノクトの様子をしばらくじっと眺めていた。ノクトには、その視線を感じながら、顔を向ける勇気がもてない…呆れられているのか、責められているのか。俯いたまま、ただ、じっと視線に耐える。しかし、トルドーは、また、遠くの方へ視線を戻して、そして、なぜだか、ふふっと、笑いを漏らした。


「実は、ワグからその話を聞いたとき…私は、ほっとしたよ」


え... ノクトはようやく顔を上げて、トルドーを見た。トルドーも、不思議かね? とでも言うように、ノクトの顔をちらっと見返す。


「我々は軍人だ。悲しいことに、我々が戦場で人殺しを躊躇ったら仕事にならん。だが、君は国を統べる王だ…多分、ルシスだけでなく、全世界のために奔走することになる。そんな君が…人殺しを躊躇うような人物で本当に良かったと思っている」


相変わらず疲れたような表情だったが…ノクトには、ようやく、その目の奥にある彼なりの優しさが見えたような気がした。感謝するように、そっと目を伏せる。それから、ようやくいつもの軽快さを取り戻したように、


「あんた…これから随分と働かせるつもりらしいな?」


と笑って見せた。トルドーも思わず、にやっと笑った。


二人が展望室まで戻ってきたとき、ハルマたちはまだ展望室で和やかに談笑しているところだった。タルコットとプロンプトも、ようやく回復したようで、体を起こして、談笑に加わっている。


そこへちょうど放送室の戸が開いて、ベルハルトが一同に呼びかけた。


「ルシスからの通信が転送されてきました」


場に緊張感が戻り、ハルマ、ノクト、ルーナがトルドーに続いて放送室に詰め掛ける。


「やけに早いな…まだ、放送から2時間だぞ」


トルドーも驚いている。


「広域通信をぎりぎりの範囲で…音声がかなり悪いですが」


と前置きをして、制御室の兵士が通信を再開する。


ーこちら、帝都、エルダーキャプト電波塔。転送開始願います


ー了解です。転送開始…


ー…こちら…イグニス・スキエン…ア補佐官。ニフル…ム連盟…少将と話したい


「トルドーだ。スキエンティア補佐官、早速の連絡、感謝する。通信状態が非常に悪い…込み入った話は難しそうだ。こちらの声は聞こえているか?」


ーそちらの…聞こえ…いる。我々…ルシス…政府…は、連盟と…こく…わ…会議を支持する


おおお と放送室がどよめいた。


「すげーな。そっちではもう、話がまとまったのか?」


ノクトが、まるで他人事のように驚いて声を上げる。


ー今のこ…は、ノクト…か?


「ああそうだ。悪いなイグニス。お前のお膳立てした舞台を壊しちまって」


ー…いい…すばらしい…てい…だ


音声はますます聞き取れにくくなり、そして、激しいノイズが入ったかと思うと唐突に切れた。


ーこちらファグナ2号機。通信途切れました。電波不調。


どうする? と一同は顔を見合わせた。トルドーは、ため息をついて


「少なくとも、ルシス暫定政府の支持を取り付けられたことはわかった。現段階の情報として、申し分ないだろう。君らは予定通りチパシへ戻ってくれ。この状態でここから話を続けるのは無理だ。アラネア機の方が通信機の性能もいいし、チパシ周辺から通信を試みて欲しい」


「了解だ。あんたから、ルシスへ伝言は?」


「散々打ち合わせただろう。あとは、君に任せる」


ノクトは、素直に頷いて笑った。


アラネア隊の揚陸艇が、夕日に追い立てられるように慌しく離陸した。アラネアは、先に揚陸艇に戻ったときに昼寝をしたらしく、今はすっかり元気が戻っている…安定飛行に入ると、我が物顔で操舵室に邪魔しに行って、すっかりなじんだアラネア隊の連中と、おしゃべるをしながら、時折、きゃーきゃーと可笑しそうに笑っているのが聞こえた。邪魔していないのかなぁ、とノクトは心配しつつ操舵室の方を気にしたが、ルーナやタルコットがいつもの通りという顔で特に焦っても居なかった。たぶん、この数日の旅のうちに、これがこの舟の日常となったのだろう。


「着くまでには日が暮れそうですね…」


タルコットが疲れたように呟いた。


「そうだな…出発が少し遅れてしまったしな」


プロンプトは、今は機嫌よくとり溜めた写真を眺めていた。


「今日もすごいの撮れたわぁ…あのアンテナの場所、絶景だったねぇ」


あら、すごい…とルーナが、プロンプトのカメラの液晶を覗き込んでいた。ノクトは、ルーナとプロンプトの距離がなんとなく気に入らなくて、興味もなかったのだが自分も二人の間に割って入るようにしてカメラを覗きこんだ。アンテナの脇の踊り場で興奮しまくっているアラネアの姿、絶景を背後に3人で顔を寄り添って取った自撮り画像、高く見上げた先に、日の光を受けているアンテナの先端…


「電波塔の先端まで登ろうとしたときには焦りましたけど…」


ははは… と乾いた笑いを漏らしながら、タルコットが呟いた。


「お二人とも、本当にお疲れ様でした。到着まではゆっくりされてくださいね」


と、ルーナは笑いながら、自分はアラネアが騒ぐのが気になったのだろう。操舵室の方へ入って行った。


「あ、そういえばさ…少将から聞いた? ヴァーサタイルのことだけど」


と、プロンプトは、あまり気負いもなく切り出す。


「いや…そっちの話は聞いてる暇がなかったな…なんかわかったのか?」


「そっか。ノクト、ちょうど打ち合わせ中だったかな…マーカスさんがわざわざ来てくれて、それで聞いたんだけどね。…たぶん、ヴァーサタイルを名乗っていた人物と思うんだけど、遺体が出てきたんだ」


ノクトは、およそ予想していたことでもあったので、ただ、ふーん、と答えた。


「どこで? やはり、魔高炉の当たりか?」


プロンプトは、カメラから目を離さないまま、首を振って


「あの怪物がさ…あんまり腐臭が酷いらしくて、解体して焼却処分したらいんだけど、その途中で、見付かったんだ。燃やしている最中だったから、はっきりしないんだけど、胃の中から未消化な状態で出てきたって」


へぇ… ノクトは、脳裏に具体的な想像が沸きそうになってそれを打ち消し、


「食われたってことか…ありえるな。ヴィクトルもあの有様だったし」


「そうだね…で、写真、見せてもらったんだよね。遺体の傷みが激しいから迷ったみたいだけど…オレが見たがると思って持ってきてくれてたんだ」


ええ?! とノクトは、明らかに引いた様子でプロンプトを見た。プロンプトは、しかし、平気な顔をして、まだ、自分のカメラを眺めている。


「まあ…燃え始めていたし、顔はほとんど識別ができなかったんだけど…腕の部分がまだ、燃え残っていてさ。写真にはっきり写ってた。右腕に…バーコードがあった」


ノクトは、どう答えていいかわからず、しばし黙った。


「そうか…」


プロンプトは、画像のチェックが終わったらしくカメラをようやくしまいこんだ。そして、ノクトの方を見たが、その顔はせいせいしているように見えた。


「そ! いろいろ想像はできるけど…これで終わり!」


プロンプトの明るい表情にノクトもほっとして、笑い返す。


「納得したんだな」


「うん、まあね。そいつ、ある意味…ほんもののヴァーサタイルだったんだよね。おんなじ遺伝子だもん。でも、そいつはヴァーサタイルに成り代わることを選択したけど…オレは違うし」


ぷぷぷ とノクトは噴出して


「遺伝子が同じでもなぁ…お前は、科学者って頭じゃねぇな。何が悪かったんだ?」


はあああ?! プロンプトは睨んで


「ノクトの方が普段の小テスト、赤点多かったでしょ?! 知ってるよ! 定期テストのときだけ、イグニスに仕込まれて、直前に挽回するんだから!!ずるいよ、王子は!!」


「るせー。お前も、時々勉強に来てたじゃないか。人の側付きを家庭教師にして」


「うちには家庭教師つける余裕がなかったんです! いいじゃん、ケチ!!」


タルコットは二人のやり取りをみながら、くすくすと遠慮がちに笑っていた。


結局、チパシに付いたのは19時近く。そこから、なんだかんだと本部に報告に立ち寄っていたら、家にたどり着けたのは22時近くなっていた。先にルーナと帰宅していたアラネアは、すでに自分のベッドに入って眠っていた。ルーナは、ノクトを待ち受けていてくれたが、次の日も早朝からイグニスたちと広域通信での会談が決まっていて、久しぶりに夫婦で語らう時間もなかった。ルーナに促されるままベッドにもぐりこむと、ノクトはあっという間に眠り落ちた。


そして翌日。

なんでよりにもよってこんな早朝に… ノクトは、早朝からうるさいアラネアにたたき起こされるようにして家を出てきた。今は、もう、アラネア機が、広域通信の受信範囲を性能ぎりぎりまで拡大しようと上空1万mまで上昇をしているところだ。油断すると意識が遠のく…操舵室で隣に座っていたタルコットは、同情するようにその肩を揺すって


「もうすぐ上空停止しますよ…」


と声を駆ける。


るせーな… ノクトは明らかに不機嫌な様子で、タルコットの腕を振り払った。


ー高度1万m。上空停止!


操縦士の切れの良い号令が聞こえて、揚陸艇が上昇停止する。


「ノクトさん…悪いんだが、起きてくれるかい」


ヴィックスの低い声がすぐ傍に聞こえて、ノクトは、驚いて飛び起きた。ヴィックスは、相変わらず感情の読み取れない、据わった目をして、ノクトをじっと見ていた。


「お…わ、わりぃな。もう着いたのか」


ヴィックスは、表情を変えずに淡々と頷くと、操舵席の方へ戻っていった。見ると通信士が、すでに広域通信を開始しているところだ。発信を告げるランプが、モニターに映し出されている。


ーこちら、ハンター協会飛行部隊1号機。イグニス補佐官の応答を求む


ーこちら、2号機のモルスだ。おはよう! みんな元気か!


ああ、あっちもアラネア隊の揚陸艇をだしてるわけか。 と一同は、急にリラックスした雰囲気に包まれた。


ーおはよう、モルス。ヴィックスだ。ルシスまで戻っていたのか


ーああ、つい3日前さ。休暇中のはずだったんだがな


ヴィックスは、口だけ笑って、


ーそりゃ、お気の毒だな。今、どの辺りまで来てるんだ?


ー沖合いをかなり進んでる…ニフルの鉄道がみえるくらいだな


ー随分、思い切って近づいたな…


ーああ…アコルドにも通達済みで…さすがに上陸はしないが。おい、イグニス補佐官に代わるぞ


ー了解だ


ヴィックスが振り向いて、ノクトにまたその据わった目を向けた。ノクトは、たじたじと体を起こして、ようやく通信マイクの前に座る。


ーノクトだ…


その声は、いかにも眠そうだ。


ーイグニスだ。おはよう、ノクト。随分お疲れのようだな


ーあの後、夜遅くに帝都から戻って、こんな早朝に呼びだされればな…


はああ、 とノクトは非難がましくため息を漏らす。


ーそういうな。こっちもバタバタなんだ。今日の午後の評議会までに、そちらと話をつけて必要な情報を持ち帰る必要がある。


ーこの通信の件、アコルドに通告したって?


ーああ、そのほうがはやい。連盟の真意を確認する、という名目でな


ーアコルドはまだ、騒いでないのか?


ふふふ、とイグニスは笑って


ー大騒ぎだよ。昨夜、はやばやと、ルシス暫定政府に対する厳重抗議を表明した。合意を無視した横暴な遣り方だと…


ノクトは、うう、と唸りつつ


ー…大方予想通りだ。悪いな。もう、このまま突き進ませてもらうぞ


ーわかってる。こっちもそのつもりだ。そうだ、本題の前に…


とイグニスが、改まる。


ーご結婚おめでとう


ノクトは、突然のことに面食らって、ぼんやりとしていた。


ーああ...ありがとな。まあ、こっちは今更って感じだが…


ー今更ってなんだよ!お前、こっちに連絡もよこさず、いつ結婚したんだ?!


グラディオが大声を上げて、通信に割って入ってきた。ったく、朝からうるせーな…ノクトは、スピーカーから心持ち離れるように身をのけぞる。


ー…2か月くらい前か?忘れたな


ー今、そちらの舟に、ルナフレーナ様はいらっしゃるのか?


グラディを押しのけたのか、イグニスの落ち着いた声に変る。


ーいねーよ。…プロンプトもたぶん、まだ家で寝てる。あ、タルコットならいるけどな


ノクトは、来いよ、とマイクの前で手招きする。タルコットは、ははは、と遠慮がちにノクトの横に顔を出して、


ータルコットです…ご無沙汰しています


と声を出した。


ータルコットか…ノクトに届いてくれたんだな。本当にありがとう


ーい、いえ! そんな大したことは何も!


ーなにも、じゃねぇだろ。オレのピンチにばっちり駆けつけて、助けてもらったぞ


ーそうなのか?


いえ! ほんとに何も!! …タルコットは、慌てて首を振ると、遠慮するようにマイクから遠ざかった。通信の向こうで、イグニスが笑っているのが聞こえる。


ーそれで…ニフルの内情は落ち着いたのか? 前のタルコットの報告では、内紛がおきそうだと聞いていたが


ーああ、なんとかな。ヴァーサタイルを名乗る輩が、あっちこっちで紛争を仕掛けていたんだが…


ーヴァーサタイル? やつは死んだはずでは…


ー偽者…というか、詳しいことはプロンプトがレポートに書くって言ってたわ。とになく、ファグナも解放したし、ボンガロも奪還した。帝都に眠ってた最終兵器も潰しておいた


ー最終兵器?


ーすごい怪物が眠ってた…とても信じられないと思うが、10階建てのビルくらいはあったな。そいつを、ヴァーサタイルの偽者が呼び起こした。オレと、プロンプトと、キリクってやつと、それと、タルコットで倒した。10日くらいの前の話だ。今のところ、それ以上、大掛かりに武装している地域は確認していないが、今も連盟が調査中だ。


ーなるほど…


しばらく、通信の向こうで、話し合っている声が聞こえる。


ーニフルハイムの内情はわかった。本題に入ろう。会議に開催についていくつか、そちらの意図を確認しておきたい。会議の趣旨には概ね賛成だ。だが、アコルドと2国間協議を進めていた立場としては、内外にそれなりの説明がいる。今の話からすると…問題となるのはアコルドの出方だけのようだが、もし、アコルドが和平会議の開催を拒んだらどうするつもりだ?


ー想定の範囲内だ。そんときはケルカノで開催する。アコルド抜きで国際会議を開いていいって言うなら、ほうっておけ。オルティシエの開催は、アコルドに見せ場を作ってやるために考えただけのオマケだ


ほう… と、通信機の背後で、複数の人が感心したようなため息を漏らしているのが聞こえてきた。


ー考えたな


イグニスの声も、驚きに満ちていた。


ーつまり…ニフルハイム全土と、ルシス暫定政府は参加を表明している…現時点で、この世界に残存する大半の地域が参加を表明することになる。アコルドは無視できるわけがない。


ーそういうこと


それ、お前が考えたのか? とグラディオの驚いた声を通信機が拾っていた。ノクトは、苦笑して


ーユスパウの領主とトルドー少将が計画の大半を練った…オレは面白そうだから、一枚噛んだだけだ


ふん…と気に食わなさそうな、グラディオの声がまた、割って入って


ーしかし、アコルド政府は、ニフルハイム連盟の成立を認めないと言っているぞ


ー構わんさ…放送を聞いたろ。連盟は異論あるものと対話する用意があるって。改めて、そっちからもアコルドに伝えろよ。和平会議の場であらゆる対立する意見を話し合う用意がある…それが、ルシスとニフルハイム連盟の意向だ。そのために、どのような立場の者も、参加を拒まない…その条件は、アコルドに呑ませろ


グラディオが、悔しそうに押し黙った。

あいつ、何、対抗意識を燃やしてんだ?ノクトは不思議に思った。一方、イグニスは、相変わらず楽しそうに笑いを漏らしている。


ー…わかった。その話でこちらも乗らせてもらおう。ルシス暫定政府の正式表明は、評議会の後に予定している。こっちも突貫工事だ。レスタルム市長は声紋照合しろと大騒ぎしていてな…まあ、彼の勢力も大分離反したから、評議会は問題なく片がつくはずだ。その後で、アコルドの方も対応する


ー頼りにしてるぞ、イグニス


ノクトが、ようやく目が覚めた声で、強く呼びかけた。イグニスは、なぜか少しの間沈黙していたが、やがて重々しく答えた。


ー御意に…陛下


にやけているその顔が、ノクトには見えるようだった。

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