Chapter 21.3-ケルカノ合同本部-

何にもない茶色い大地…延々とつづく荒れた山肌…夕暮れに差し掛かる日差しも、まだ熱くその大地を焼いている。ところどろこに、厚い雲が漂って、雨季の訪れを匂わせていた。

南西のほうへ目を向ければ、帝都に向かって山が重なり合うように高く盛り上がっていくのが見える。壊滅的だと聞いている帝都方面…あっちのほうは、完全に無人なんだろうか? タルコットは不思議そうに目を細める。


一方、視線を東のオルティシエに向けると、その美しい町並みが日差しで輝いてみる。乱反射する海の中にある街並は、とてもこの10年の闇の時代があったとは思えない光景だ…。さらに街の東の海上からは、シガイの怪物のように、盛り上がった大きな黒い雲の塊が見えた。あれが到達するころには、いよいよ、途切れない雨の毎日が始まるだろう…


すぐに雨季か… はじめから予想はしていたものの、ため息が漏れる。


「着陸準備、降りるぞ!」


操縦席から乱暴な声が響き、貨物室にいたハンター達はわたわたと、壁際の小さな座席に着き、シートベルトを締める。タルコットもすぐそばの座席に腰を下ろした。ああ、いよいよケルカノ…ルシスの外だ。はるか下のほうに、小さなテントの群れが見えたっけ…


揚陸艇は静かに、ケルカノのやや北側の開けた台地に降り立った。どがががん、と衝撃がきて、乗組員達は壁際に手を突いて体を支えた。すぐに、揚陸艇の後部が開口して、砂埃でかすんだ外の空気が入ってくる。隣に、アラネア隊の1号機の揚陸艇がとまっているのがみえた。アラネアさん…いま、ケルカノにいるんだな。


「よし、本部までどんどん物資を運んでくれ。ぼおっとするな。すぐ日が暮れるぞ」


うっす、はいよー とそれぞれの声がして、ハンター達は次々と積荷を担いで外へ出た。タルコットも積荷を受け取ると、先輩ハンター達に続いた。先頭を切って積荷を持っていったのは、何度かケルカノとルシスを往復しているハンターだ。本部とやらの場所もわかっているのだろう…みな、その背中を追いかけていた。


ケルカノの集落は、元駅舎を始まりとして、今は、線路沿いに数kmに伸びていた。ルシス・アコルドの両ハンター協会が打ち立てた合同本部は、集落の北側にある。プレハブの建物が連なり、倉庫の大きな屋根も見える。左脇の大きなテントが、医療テントだったけ。右のドーム型のテントが、確か、最近できた仮設の学校のはずだ。線路上にまだ残るテントの群れの向こう側には、急ピッチで進む仮設住宅の建築現場が見える。数日前の打ち合わせでは、物資が不足してなかなか進んでいないと聞いていたが、ここから見る限り、意外と捗ってる用に見える。もう東の棟には人が住んでいる形跡がある。


「おい、タルコット!置いていくぞ!」


「あ、す、すみません!」


いけない…あれこれ眺めているうちに足が遅くなってた…タルコットは慌てて、先輩ハンター達を追いかけた。今回の遠征では…というより、遠征されたハンターの中でタルコットは最年少なのだ。そのせいで、事前の打ち合わせの時から、何かと先輩達のからかいのタネにされている。イグニスから直々に依頼された重要任務については、多くのハンター達には内密にされているから、仕方のないことかもしれない。異例の抜擢としてどうしても、好奇心をもたれてしまう。


今回の遠征チームの初回の打ち合わせでタルコットが会議室に足を踏み入れたとき、他のハンターの面々が一斉にその視線を向けた…いかにも場違いといった目線。他のハンターたちは軒並み、10年以上の経歴をもつベテラン。タルコットがハンターとして正式に登録をしたのはわずか2年…実績としても圧倒的に見劣りする。

しかし、打ち合わせを仕切っていたデイブは、タルコットを今回の遠征チームとして堂々と紹介した。あの、王の盾、グラディオラスの推薦だと言って。それで、他のハンター達も、興味津々とこの若造に注目した。きっと、見た目とは違い、すごい手練なのだろう…。あの時のみなの視線を思い出すと、タルコットは今でも冷や汗が出る。


本部のプレハブがようやく近づいてきた。遮るものがないから着陸地点からよく見えたが、結構な距離があってなかなかたどり着けなかった。もっと近くに着陸すりゃいいのにな…と誰かが文句を言った。足元を見ると、なるほど、本部近くの地面は微妙に岩肌が凹凸をしていて、揚陸艇の着陸には不向きだ。


「おう、こっちだ!ご苦労さん!」


地元のハンターらしく人物が、一行を倉庫の入り口のほうへ案内した。体育館くらいの高い屋根の倉庫に、次々とハンター達が入っていく。タルコットも遅れまいと、慌ててその入り口をくぐった。広い空間に物資が山済みになっていた。多くがルシスからの支援物資だ。ほとんどのダンボールにはルシス王家の紋章が印字されている。アコルド政府が物資の提供をしぶっていると、先輩ハンター達が文句を言っていたっけ…よく見れば、混じって、アコルドの国旗がマークされている箱もいくつかあるようだ。


「印字されている分類に従った場所に積んでくれ」


倉庫内は、物資の種類によって区分けをされていた。天井から、場所がわかるように大きく区分が書かれたプレートが下がっている。食料、衣類、医療用品、衛生用品...タルコットは自分の抱えてきた大きなダンボールを見た。ええと…無線機・電子機器一般。機械が入っているのか…どうりで重いと思った。倉庫の中を眺めるが…該当するプレートが見つけられない。


「あの…すみません、これはどこに運べば」


タルコットは躊躇いがちに、近くにいた現地のハンターらしき男に声をかけた。


「ああ…こりゃ、本部に直接運んでもらったほうがよさそうだな」


と、男は、倉庫の外を指した。


「隣のプレハブだから…誰か中にいるやつに聞いてくれ」


「わかりました。ありがとうございます」


タルコトットは丁寧に礼を言って、倉庫を出た。すぐ隣が、本部のプレハブだ。そのプレハブの建材自体もルシスから持ち込んだものだろう。レスタルムに立てられたハンター協会の事務所も似たような構造だった。プレハブといえども、結構な大きさがある。レスタルムでは同じ建物の中に、防衛隊の詰め所も同居していたくらいだ。

すぐ目に付いた入り口から中に入ると、ちょうど、事務所なのか受付のようなカウンターが見えた。タルコットはほっとしてカウンターに近づいた。


「すみません、この荷物をこちらに運ぶように言われたのですが…」


受付の女性がダンボールのラベルを見る…


「無線機・電子機器…ああ、これ、この間頼んだばかりなのに。ルシスは対応が早くて助かるわ」


女性は無線機を取り出して、誰かに呼びかけた。


ーリー? 例の機械のパーツと、無線機の追加が届いたわよ。とりあえず、そっちに持って行けばいいわね?


ーああ…そうしてくれ


だるそうな男の声が聞こえてくる。


ー仕事は進んでるんでしょうね?!


女性はなぜか、険しい顔をして語気を強めた。


ーあ、ああ…やってるよ


ぶちっ と、一方的に通信が切れた。もう! 受付の女性は明らかにイライラした様子だった。


「じゃあ、悪いんだけど…それ、旧事務所のほうまで運んでもらえる?ええと、あなたは、今日ルシスから来たのよね…」


と、タルコットの胸元の身分証を見つめる。


「タルコット…」


「はい。タルコット・ハスタです。よろしくお願いします」


タルコットは笑顔で答えた。しかし、女性は…ちょっとの間、じっと身分証を見たまま静止した。


「ええと...」


「あ、ごめんなさい…タルコットね。私は、デイジーよ。よろしくね」


デイジーは慌てて、その顔に笑顔を浮かべた。そして、壁にかかっているケルカノの地図を指して、


「ここが現在地よ…旧事務所の小さなプレハブの建物は、キャンプを超えた軍の敷地内にあるの。フェンスを越えた向こう…小さなゲートがあるんだけど、衛兵に身分証を見せれば通してもらえるから…」


と、それからちょっと考えるように黙って、しかし、すぐに首を振って


「ええと、中に、リカルドってハンターがいるから…あとは彼に聞いてもらえる?」


「わかりました。リカルドさんですね。確か…ケルカノの、ハンター協会のリーダーさんですよね?」


んん、まあ…一応… とデイジーはあいまいな返事をして、なぜか苦笑した。教えていただいてありがとうございます、と丁寧に頭を下げてから、本部を出て、ケルカノ駅のそばのアーチを目指して歩き出す。


ノクティス様が自分の名前を使ってたのは聞いてたけど…今の反応がそれかなぁ…


ノクティスが、アコルドでタルコットの名前を騙っていたことは、イグニスから聞いていた。その話をされたとき、タルコットは大いに戸惑ったが、イグニスは笑って、同姓同名がいたっておかしくはない。誰か好奇心をもたれても、焦らずに普通にしていろ、と言われたのだった…タルコットは、早速いやな予感がして胸がドキドキしていた。

ケルカノの滞在は、1,2日の間のはずだ。離陸許可さえ得られれば、アラネア隊と一緒に揚陸艇でシャンアールに向かうことになっている。今日、明日さえ気をつければ問題ない。なるべく目立たないようにしよう…


指示された旧事務所までは、かなりの距離がある。まだ、住宅に移れない難民達が、テントの群れを築いていた。難民の大人や子どもがひしめき合って騒がしい通りを、大きなダンボールを抱えて進む。話には聞いていたが、乾燥した空気と砂埃で、早速喉が痛くなりそうだ。タルコットは少し咳き込みながら、人ごみを分けて、アーチを目指した。すれ違う難民達が時折、物珍しそうにタルコットを振り返る。こどもたちが特に顕著だ。見慣れないハンターに好奇心を抱いているのか…それとも、一際若いハンターだからだろうか。


ようやく、難民キャンプを抜けて、軍用地の境を示すフェンスにたどり着くと、また違う緊張を覚える。ここから軍の管轄か… 簡易のゲートと言っていたのは、あの、フェンスにある通用口のことだろう。人が通れるだけの幅があけてあって、その横に、物々しく銃を抱えた衛兵が立っていた。タルコットは、緊張しながらゲートに近づいた。


「あの…旧事務所に荷物を運びたいのですが…」


衛兵はちらっと、胸元の身分証を見ただけで、特に反応もしなかった。あれ、いいのかな…タルコットは、恐る恐るその前を通った。何も言われなかったので、あの一瞥がゲートを入門するためのチェックだと理解した。


よかった…特に、軍のほうは、名前に反応しないみたい…


タルコットはほっと胸を撫で下ろして、ゲートからすぐに目に入るプレハブの建物を目指した。建物の壁に、ハンター協会事務所、と、落書きのようにスプレーされていた。遠慮がちに戸をノックする。


おう、入れよ


だるそうな声が中から聞こえてくる。失礼します、と言って、中に入る。両手に大きなダンボールを持っていたので、扉を開けるのは一苦労だった。一歩足を踏み入れると…う、アルコール臭が鼻をつく。


まさか…お酒?


中は、まるで倉庫のように荷物が積みあがっていて、その中に埋もれるように、辛うじて事務机一段だけが空間を作っていた。その机で、右目が傷でつぶれた凄みのある男が、必死に書類と格闘している姿があった。男は、時折うーんと唸って難しい顔をしながら、そして、おもむろにグラスを手にとって琥珀色の液体を飲んでいた。


の、飲んでるし…


タルコットは戸惑いつつ、


「あ、あの…リカルドさんですね? 荷物を持ってきました。先ほど無線で…」


と声をかけた。


「ああ、ご苦労さん。その辺適当なところへ置いてくれ」


リカルドは顔も上げずに、言う。はい…タルコットは、周囲に荷物を下ろせそうな空間を探した…どこも荷物がアンバランスに積みあがっていて、用意に荷物を下ろせそうにない。しかたなく、傍にあったダンボールを壁際に押しのけて、ようやく空間を作ると、ようやく荷物を下ろした。


「じゃあ…僕はこれで…」


「ああ…」


とリカルドは、忙しそうに書類をまくりながら…それから、ちらっとタルコットのほうを見て


「いつも飲んでるわけじゃねぇぞ。今日は…たまだまだ。友人の快気祝いなんだよ」


と言い訳するように付け加えた。


「そ、そうです…よね…」


ははは…と乾いた笑いを返して、そそくさと事務所を立ち去ろうとする。

ん? とリカルドが背後で、変な声を出した。


「お前…もしかして、タルコット・ハスタか?」


え… タルコットは嫌な汗をかいて、ゆっくりと振り返った。


「ええ、そうです。今日、ルシスから配属となりました…よろしくお願いします」


「へえええ、お前さんが…」


リカルドはニヤニヤと笑って、それまで手にしていた書類を放り出すと、値踏みするようにタルコットを眺めた。


「やけに若いのが一人混じってると持ったんだ…しかも、’タルコット・ハスタ’ ときたか…座れよ、タルコット」


「でも、まだ荷物運びがありすので…」


「ほっとけ。他のやつにやらせておけ。ちょっと、親睦を深めようぜ」


といって、足元をごそごそ漁ると、お酒の瓶を持ち出したので、タルコットは仰天して首を振った。


「す、すみません!未成年なので!まだ飲めません!」


「このご時勢に、堅苦しいなぁ…」


リカルドは、勝手に新しいグラスに酒を注いでしまった。タルコットは、どうしようと、慌てふためきながら、押し付けられたグラスをつい受け取ってしまう。いい香りがする…としばしうっとりしてグラスを見る。


「特別な酒だぜ? といっても、お前くらいの歳だとわからないか。”レガシー”…10年前、アコルドで手に入れようとすれば、かなりの大枚を叩く必要があった。ルシスの老舗ブランドだ」


え… と驚いてタルコットは、リカルドの顔を見た。


「ルシスのお酒ですか?」


「そうだよ。お前の親分が置いていったんだ」


はっとして、タルコットは酒の瓶をまじまじと見た。


「ノクティス様が…」


思わず呟いて、慌てたように、口を手で塞ぐ。リカルドは笑いながら


「やっぱり、家出した親分を追いかけてきたのか…そろそろ誰かをよこすんじゃないかと思ってたんだ。2国間協議の日程調整で、偉く、プレッシャーをかけられてるんだろ」


タルコットは、青ざめながら口をつぐむ…ケルカノのハンター協会は、協力的だとは聞いているが、どうしよう…極秘任務なのに。リカルドは、タルコットの動揺を可笑しそうにその様子を眺めながら、自分のグラスを口に運び、残っていたわずかな液体を飲み干してしまった。


「そう警戒すんなよ。お宅んとこのスン…なんとかって補佐官に頼まれて、都合のよい報告書を書いてやったのは俺だぜ?」


「…スキエンティア補佐官ですね」


タルコットは真面目な顔をして答える。


「イグニス・スキエンティア補佐官」


「ああ、それだな?」


とリカルドはいい加減な返答をする。


「それにしても…こんな、かわいい坊やを使いにやるとはな。首根っこ捕まえて、引きずっていくくらいでないと、あんな放蕩野郎を連れて帰れるとは思えないんだが…お前、奴のどんな弱みを握っているんだ?」


タルコットは、それまで動揺していたことも忘れて、リカルドの失礼な物言いに、ムッとして、立ち上がった。


「いくら異国の君主とはいえ…それなりの敬意を示すのが礼儀ではないでしょうか」


お… とリカルドは、残された左目を大きく見開いてタルコットを見る。タルコットは、もう動じなかった。もらったグラスをそのまま机に戻すと、軽く頭を下げて、


「他の任務がありますので…失礼します」


と告げて、さっさと事務所を出て行った。


へえぇ… リカルドは、意味深ににやっと笑いながら、残されたグラスを遠慮なく飲み干してその背中を見送った。


ああ、もう、しょっぱなからボロをだすなんて…旧事務所を出た途端、激しい後悔が空き起こる。極秘任務…アコルド政府と軍に気づかれないように、ニフルハイムの内部へ潜入し、ノクティス陛下を見つけ出すこと...シャンアールへ行ってしまえば、アコルド政府の目が届かない。それまでのたった、数日のことと思っていたのに…もう任務がばれてしまった。リカルドがやってみせたのは、簡単な引っ掛けだ。あんなことで、自分からボロをだすなんて…。


だから…自分には荷が重いと言ったんだ。


タルコットはイグニスとの面談を思い出していた。はじめこの任務のことを持ち出されたとき、タルコットは、正直に、自分には荷が重いと告げたのだ。


「万が一、この任務が失敗したら…政治的にもかなりの影響があるのでは?」


その問いに、イグニスは迷いなく


「ある。はっきりいって、2国間協議の行方を左右するだろう。それだけ重大な局面にある」


と言い切った。国の将来を左右するような局面…?! タルコットは、青ざめた。そんな重大な任務を自分が背負うなんて…無茶すぎる。


「おい、タルコットをあんまりびびらせんなよ」


同席していたグラディオは呆れたように言った。


「誤魔化しても仕方ないからな。真実を知る権利は彼にもある」


そう言いながら、イグニスは意味深に笑っていた。


「重責だ…それを否定しない。ノクトの未来…ルシスの未来を大きく左右する任務だ。タルコット、お前に十分な素質があるとか、そんなことを議論している余裕はない。今、この時、この任務を引き受けられるのはお前だけだ。だから、お前がやるのか、やらないか、だけだ」


イグニスは若干微笑みながら、とんでもない決意をタルコットに迫っていた。


「…この僕に国の未来を背負えと?」


「どうだ。俺やグラディオが背負ったように。あるいは、ノクトが背負ったようにな。自分の未熟さに恐れおののきながら、それでも背負わなければならかなかった。だから、俺は背負った。もっと適正した人材がいればいいと、いつも思っていた。しかしそんな者はいない。素質ではない。経験や年齢も意味がない。重責は…背負う覚悟のあるものが背負う以外にない。意思があるか、ないか。それだけだ。だから、お前の意思を聞かせて欲しい」


タルコットは、圧倒されて黙った。自分に…できるだろうか。その不安を考えれば、押しつぶされるだけだ。しかし、他に選択肢はない。自分ができなければ、…他にはできない。でも、本当に…?


「今、ノクトが真っ当に話を聞こうとする人間で、目立たずに潜入できるやつはお前しかいない」


イグニスは真剣な表情で言った。グラディオが、同意するように深く頷いた。


あの時の複雑な感情。強烈な不安と同時に、高揚するのような強い誇らしい気持ちが湧き立ったのを思い出す。


自分しか…できない? こんな…つまらない自分にしか?


タルコットの脳裏に、この10年の、孤児となった自分を救ってくれ、そして育ててくれた人々の顔が走馬灯のように駆け抜けた。もちろん、その中にノクティスの顔もある。不思議に、気持ちが静かになって、タルコットは頷いていた。


分かりました…僕が引き受けます


はああああ… と大きなため息をついて、タルコットはケルカノの乾いた空を見上げる。ここまできて泣き言を言っても始まらない。リカルドは、悪意は感じられなった。多分、味方してくれるつもりでいるんだろう。であれば、くよくよしても仕方ないじゃないか…当然、ボロはでるさ。相手があの人でよかったと思う意外にない。


タルコットは覚悟を決めて、前を見た。騒々しい難民キャンプの中を、ぐいぐいと進む。はやく揚陸艇に戻って残りの積荷を運ばないと。すれ違う難民の子ども達が、新入りの若いハンターに好奇心を露にて、顔を覗き込んだり、手を振ったり、話しかけたりする。人懐っこいこたちだなぁ…


「ごめんね!今は急ぐから」


タルコットは愛想よく笑顔で応えながら、こどもたちを振り切って先を急いだ




















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